睡眠時無呼吸症候群(SAS

 

一般に3種類の病型に分類されている。

@気道の閉塞による閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome :OSAS

A呼吸中枢からの換気応答の消失による中枢型睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome :CSAS

B両者の混合型である。

なかでもOSASSAS全体の90%以上を占めるといわれており,上気道の解剖学的狭窄および上気道筋の緊張性の低下、舌根沈下による気道閉塞が原因で発症するといわれている。

1.            OSASに対する治療は

 
経鼻式持続陽圧呼吸(Nasal  Continuous Positive Airway Pressure :n-CPAP)療法が一般的であるが近年,簡便さと治療効果の高さから口腔内装置治療(スリープスプリント療法)が注目を集めている。1984年にMeier-Ewertらがこの治療法の有効性を報告して以来、その後多くの施設でその有効性が示されている。口腔内装置を装着することにより下顎を前突させ上気道を拡大し,さらに舌筋の活性化によって上気道の開放を維持し、気道閉塞の発生を防止する。本治療は非侵襲的で優れた治療効果を有し、従来より用いられているn-CPAP療法と比較して廉価で、違和感が少なく、携帯および使用が容易などの利点を持つ。

2.            治療の流れと装置の作製方法

 
身長、体重、肥満度の診査、口腔内診査、いびきや無呼吸などについての問診,頭部X線規格写真およびパノラマX線写真による診査を行う。その後、上下顎の印象採得を行い模型を製作する。それぞれの模型に厚さ約2mmのアクリル板を加圧圧接した後に歯頚部で切り離し、歯冠部全域を覆う上下顎別々のプレートを作製する。

それぞれのプレートを口腔内に試適し,プレートの下顎臼歯部に即時重合レジンを添加した後に最大前方移動距離の5070%の位置に下顎を移動させる。その位置でレジンを硬化させることで上下顎プレートを一体化させる。臼歯部の咬合面間に空隙が存在すると不潔になりやすくなり清掃も困難になるため,隙間なくレジンを補填し,研磨を行い完成となる。


装置前方観

装置側方観

装着時

装着前

装着後

使用上の注意事項

口腔内装置装着後は歯牙、顎関節部の疼痛、や違和感、流涎、口腔乾燥などを見る場合がある。そのため装着後早期の診査、調整を行う必要がある。また装着後に問題なく使用できていても定期的な診査を行う。

装置の長期使用により自然消耗、着色、異臭などが生ずることもある。歯牙のブラッシングと同様に装置の洗浄も重要であり、一定期間後に新たに作製しなおす必要もある。

3.            口腔内装置の治療の適応・非適応

 
睡眠時無呼吸の発生には、中枢および局所の機能的および解剖的要因が複雑に影響しあっているために口腔内装置の効果も様々な要因に左右される。装置は下顎を前方位で固定し、上気道の閉塞を予防するために小顎あるいは下顎の後退傾向を示す症例に有効であるといわれている。

口腔内装置は歯牙を固定源として使用するために、残存歯が少ない場合(通常10本以下)や重度の歯周病を持つ症例には非適応である。また下顎を前方位にして固定するため、顎関節および咀嚼筋群に障害がおよぶ危険性がある。そのために顎関節症の既往がある症例は使用に際し注意が必要である。その他、口腔内装置装着後は口腔が閉鎖されるために呼吸のすべてを鼻呼吸に依存するようになる。そのため高度の鼻閉を伴う症例の使用も困難であると思われる。

4.            作用のメカニズム

 
完全にメカニズムが解明されているわけではないが口腔内装置を装着し、下顎を突出することにより上気道の断面積の増大や軟口蓋の縮小、舌形態の変化、下顎下縁平面から舌骨までの距離の減少などが報告されている。

また装置装着により主要な舌突出筋であるオトガイ舌筋の活動性が増加し、吸息時の気道内陰圧による舌の引き込みによる上気道閉塞を防止していることも考えられる。

5.            治療効果

 
口腔内装置装着前後の呼吸機能の変化を表1に示した。Yoshidaの報告によると中枢型無呼吸には無効であったが、閉塞型および混合型無呼吸に対しては優れた治療効果が得られた。睡眠時無呼吸症候群患者の大多数が閉塞型無呼吸であるために十分な効果が認められるケースが大半である。口腔内装置装着によって無呼吸低呼吸指数(AHI)、平均・最長無呼吸持続時間は有意に改善していた。また平均・最低酸素飽和度に関しても有意に改善していた。



最後に

平成16年度社会保険診療報酬の改定において新たに睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置治療の保険適応がなされた。

具体的には口腔内装置による治療が有効であると診断され、医科医療機関から提供された診療情報に基づき、口腔内装置作製を行うことになる。

この文言は口腔内装置治療が医科と歯科との連携を基本として行われなければならないことを明言している。口腔内装置治療は非侵襲的な保存的治療であるためファーストアプローチとして大きな期待がよせられている。これからも睡眠時無呼吸症候群の患者数は増え続けることが予想される。この疾患の特性、多様性を十分に理解しなければいけないことはいうまでもないが、常に医科と歯科で情報を共有し、より良い医療を提供していかなければならない。

 

参考文献

瀧本賢一郎、中川健三他睡眠時無呼吸症候群に対する歯科的アプローチ,歯界展望 98  435-440  2001

宮澤英樹、中塚厚史他閉塞型睡眠時無呼吸症候群に対するスリープスプリント(SS)治療,信州医誌 50  71-75  2002

いびきと睡眠時無呼吸症候群 砂書房

睡眠時無呼吸症候群 医歯薬出版株式会社