口腔がん

1.        はじめに

癌は最近では様々な遺伝子の異常が幾つもの段階を経て発生・進行し、種々の遺伝子異常のパターンによって規定されていると考えられている。特に口腔がんに関しては、発癌因子として、喫煙、アルコールなどの化学的因子、そして歯や不良な補綴物などによる外傷性の慢性刺激など多種多様である。

口腔がんは、主として口腔粘膜上皮より発生し、組織学的には扁平上皮に由来するものが圧倒的に多い。全癌に対する口腔癌の割合は、1〜3%程度で、頭頸部癌のうちでは35%程度である。

2.        どこに、どんな「がん」が?

発生部位では舌がもっとも多く、次いで歯肉(歯茎)に発生することが多い。他に頬粘膜、口蓋、口底といったその他の口腔粘膜、さらに顎の骨や唾液腺にも発生する。

そのため、当科のデータでも、癌の組織型は口腔粘膜からの扁平上皮癌がもっとも多く、全体の85.6%を占めていた。他には腺様嚢胞癌や粘表皮癌といった唾液腺がん、さらに悪性リンパ腫や転移性癌もみられる。


舌がんのいろいろ
白色の板状 腫瘤状 潰瘍 内側に深く入り込む
見た目も、色々な形があり。痛みなどの症状の出方にも違いが出る。進行のスピードにも違いがある。
それにより、治療法や予後にも影響してくる。
歯肉(歯茎)がんのいろいろ
*クイズ*
どれが「がん」でしょう? 答えは下に
10 11 12
答え:歯肉扁平上皮癌 1,2  唾液腺癌 4  骨肉腫 7  他臓器からの転移がん 5,12
    歯周炎からの炎症性の歯茎の腫れ 6,7,8,9,10,11
口底がんのいろいろ
真ん中に潰瘍を作る口底がんの代表例。 白い板状。 いぼ状。
歯肉と口底の境界
に沿って潰瘍あある。
高度進展がん。 舌下腺にできた唾液腺がん。

年齢別では50~70歳代に多いが、最近では高齢化に伴い70歳代、80歳代の割合が増加傾向にある。ちなみに当科のデータでは、17~92歳で平均年齢65.6歳であった。男女別では男性では29~86歳、平均63.5歳で40歳代から症例数が増え始め70歳代をピークに年齢とともに増加する傾向がみられた。女性は17~92歳、平均67.9歳で50歳代から症例数が増え始め70歳代をピークに年齢とともに増加する傾向がみられた。また、女性では80歳代にも多くの症例がみられた。扁平上皮癌だけでは年齢は29~92歳、平均66.2歳であった。男性では40歳代~70歳代に多くみられ、平均年齢62.3歳。女性では50歳代~80歳代に多く、平均年齢70.8歳であり、平均年齢の縮図を見るかのようである。

また、ごく初期に発見されることはめずらしく、多くは周囲に浸潤した状態で、疼痛を伴った腫瘤や潰瘍形成を主訴に来院する。がんの広がりや進行度の指標には、UICCTNM分類や臨床病期別Stage分類がある。それによると、当科においてはStageT18.0%StageU32.8%StageV23.8%StageW25.4%であった。全体としてはStageUがもっとも多かったが、StageWの進行癌も約1/4の症例にみられた。原発巣は上皮内癌は少なく、初期が2割、中等度が5割、進行癌が3割で中等度のものがもっとも多く、また頚部(首)リンパ節転移はなしが7割、ありが3割であった。

3.        治療について

癌治療は年々進歩し、その治療法も徐々に確立されつつあり、適切な治療法により予後も改善されてきているが、早期発見、早期治療が最も重要であることに変わりはない。

一般的には、手術)、放射線療法そして化学療法の単独療法あるいはいずれかを組み合わせた併用療法が行われる。

しかし、最終的には、組織型、部位、大きさ、悪性度などの癌の要因と、年齢や全身状態、さらに社会・経済的要因など、全てを考慮し、われわれと患者さんおよびご家族とで最終判断ということになる。

私見を言えば、癌の要因としては、癌の悪性度は最も重要な因子と考える。初期がんであっても、治療が一応終わって間もなく、再発や転移を来たしたり、さらに、それを繰り返し、不幸な結果を招くことがある。これらの多くは、強悪性のがんである。これが、小さくとも「がん」である所以であり、がん治療の難しさである。

口腔扁平上皮癌の治療成績をKaplan-Meier法による5年累積生存率にて検討した。全例では65.4%StageTでは98.1%StageUでは73.7%StageVでは65.5%StageWでは38.3%であった。初期がんのstageTの方でも、全員が助かるとは言えないのだ。

初期の舌がん。切除するのが最も一般的で、確実である。
歯肉がんは、抗がん剤がよく効く場合が多い。
抗がん剤により、がんが縮小したため、縮小手術が可能になった。
抗がん剤で、がんが消失する場合も。
頚部(首)のリンパ節に転移している場合には
首の太い血管と筋肉の間の
リンパ節を摘出(郭清)しまければならない。

4.        最後に

がん治療は、日進月歩の時代です。治るべくして治っているがん患者がいる事実を知って頂きたい。もう少し早く来てくれたらそんな思いはあまりしたくないものです。ちゃんと検査して、ちゃんと治療すれば、ちゃんと治ります。がんは治せる病気です。