顎顔面外科 最近のトピックス

骨 が 延 び る ?

「仮骨延長法」について

はじめに 

  「手や足や顎の骨が延びる」ってご存じですか。決して魔法やマジックの話ではありません。世界中の整形外科医、形成外科医そして歯科医や口腔外科医を含む顎顔面外科医の注目の的となっている仮骨延長法という理論・手技の話です。

 

歴史的背景

化骨延長法は、1905Codivillaが最初に報告し、1988Ilizarovにより術式が確立されて以降、整形外科領域で主として四肢の長管骨の延長に用いられ発展を遂げてきました。現在では下肢の骨肉腫により切断した下肢を機能もほぼ元どおりに復元しつつ、仮骨延長術により再建した報告が散見されます。顎顔面口腔外科領域においては、1992McCarthyらが下顎骨低形成に応用した報告が最初で、それ以来、ドイツを中心に小下顎症や唇顎口蓋裂患児の顎変形に対し行われるようになってきました。いまでは日本も含めて欧米諸国で外科的顎矯正手術の一手技として定着しつつあります。

われわれ歯科界においても、上記の仮骨延長法の理論を応用した手技は古くから行われてきました。それは、矯正歯科おける上顎側方拡大であります。これには拡大装置のみの場合と、上顎骨切りや上顎皮質骨骨切りを併用する場合があります。この骨切りを併用した上顎拡大装置による拡大こそが、正に仮骨延長法であります。

仮骨延長法とは

 

では、現在世界そして日本の口腔顎顔面外科領域で行われ、そして学会や講演会などにおいて発表されている仮骨延長法について解説しましょう。

仮骨延長法とは、固有の骨そのものを牽引・延長することで骨の増量をはかる方法であり、生体の再生機能や機械的刺激に対する生物学的反応を利用しています。と言っても、解りにくいでしょうから、以下に図や写真をまぜて簡単に解説いたします。

 

1.長所

 (1)  他部位からの骨採取や人工材料を必要としない。
 (2) 骨の厚みや高さが確保できる。
 (3) 周囲の軟組織も増量も可能。
 (4) 骨の延長のみならず、延長(再建)部位の機能の付加ができる。

2.短所

(1) 治療期間が長い。装置の除去まで4か月近くかかる。
  (2) 延長装置への感染のリスクがある。
 (3) 創外型固定では顔面に瘢痕を残す。
  (4) 下顎頭と関節円板の位置および形態に影響あり。

3.適応

(1) 小下顎症
  (2) 唇顎口蓋裂患児の上顎骨劣成長
  (3) Treacher-Collins 症候群の口蓋裂裂患児の上顎骨劣成長や下顎発育不全

4.延長量:使用する延長用器具によりその量は決まりますが、既報告例の延長量を抜粋するとおおむね以下のような延長量となります。

 (1) 下顎骨:口内法 4.48.8161830mm
           口外法 14mm
  (2) 上顎骨:口内法 9mm
           口外法 6814171731mm
   (3)  歯槽骨:口内法 1732 mm

おわりに

今後の展望としては...

 (1) 唇顎口蓋裂患児の顎裂部や外傷などによる歯槽骨欠損に対する、垂直的延長による歯槽提形成。
 (2) 唇顎口蓋裂患児の顎裂部閉鎖ならびに上顎前歯部正中の偏位の修正。
 (3)   骨延長とインプラントとの併用。

    など考えられますし、実際に始まっています。以下にその実際例をお見せしましょう。

1.上顎前歯部の垂直的骨延長への応用例

交通事故で上顎前歯部の骨がほとんどなくなってしまった患者。

骨を切り延長器を装着し一度延長したい方向などを確認する。
延長器除去時、骨が延長されたのが確認できた。


レントゲン写真でも上顎前歯部の延長が見られる。
2.下顎前歯部の垂直的骨延長への応用例

延長器を装着した直後に骨が延びることを確認

延長器除去時、骨が延長されているのが確認できた。