エナメル上皮腫

 エナメル上皮腫は、口腔領域(顎骨)に発生する歯原性腫瘍のなかでもしばしば遭遇する代表的な腫瘍である。

近年、本腫瘍に関する新しい知見が数多く加えられており、病理組織学的にも1992年にWHOでは歯原性腫瘍の分類を改定した。

 

1.            好発年齢

30歳代とされている。当科では、初診時年齢は1775歳と広い範囲に分布し、平均年齢は42.0歳であった。年齢分布は20 40歳代が多かった。

2.            性別は、男女比12

3.            発生部位

下顎骨体部から下顎枝部に好く発生する。

4.            初発症状

腫れがもっとも多く、痛みを伴わずに大きくなることもそのため、たまたま撮った歯科のX線で発見されることも多い。

5.            X線所見

その形状は多房性のX線骨透過像が最も多く、他に単房性・類円形、単房性・辺縁不整がある。


骨の中にブドウの房のように見える
多房性の骨透過像

CTでも同じように多房性で
外側に豊隆した腫瘍が見られる

6.            埋伏歯との関係

一般的には、6割程度に腫瘍内に埋伏歯が含まれているといわれている。若年者の症例では埋伏歯を伴うことが多く、本腫瘍がエナメル器、あるいは歯堤より発生する可能性が高いとされてきた。高齢者の場合の本腫瘍の病態論では、長期にわたり病変が顎骨内に存在したために細胞が化生もしくは退行性変化をした可能性や、エナメル器以外のマラッセの上皮残遺や口腔粘膜に由来する可能性があるといわれており、高齢者では埋伏歯を伴うことがほとんどないとされている。

 

7.            病理組織像

1992年にWHOは歯原性腫瘍の分類の改定を行った。そのうちエナメル上皮腫については、近年、新たな知見が数多く加えられたため、内容が大幅に変更された。充実性の組織像を呈する濾胞状と叢状のタイプ、嚢胞状形態をとった単嚢胞型、その亜形である棘細胞性タイプ、顆粒細胞タイプ、その他の亜型が記載されている。単嚢胞型エナメル上皮腫はVickersRobinsonによって提唱された概念であり、1988年にAckermannらは、これらをさらに3型に亜型分類している。つまりgroup1は嚢胞状形態を呈し、上皮は嚢胞壁内には浸潤していないもの。group 2は上皮が嚢胞壁内に叢状に増殖しているもの。group 3は上皮が外側へ浸潤増殖しているもので再発を起こしやすいとされている。そのうち濾胞状に増殖しているものがgroup 3a、叢状に増殖しているものがgroup 3bである。

 

8.            治療法

治療は手術となる。手術方法は可及的に根治を目的に健常組織を含めて顎骨を切除することが推奨されているが、顎骨の成長期の症例では開窓療法や摘出術などの保存療法を選択することもある。しかし保存療法での再発率は2668%、根治療法では612%と保存療法では再発率が高いことが報告されている。病理組織学的には比較的再発が少ないとされている単嚢胞型の場合でもgroup3は再発を起こしやすいことが知られている。自験例においてgroup3が最も多かった。しかしそれぞれのgroupは臨床的および生検所見では判断できないため保存療法でなく根治療法を行うことが望ましいと思われた。また再発を繰り返すことによって組織学的に悪性転化することも知られている。そのため手術法の選択は慎重に行われるべきである。